Introduction

美食の国、フランス。そのフランスで初めてレストランを作った男の爽快な人間ドラマ。フランス革命前夜。宮廷料理人であるマンスロンは、公爵主催の食事会で渾身の料理を振る舞う。しかし、自慢の創作料理が貴族たちの反感を買い公爵から解雇されるところから物語は始まる。貴族と庶民が同じ場所で食を共にすることが考えられなかった時代から、「レストラン」は、その誕生と共に貴族も庶民も共に食事を楽しむ場となった。フランス革命と共に訪れる「食の革命」。食欲がそそられる美しい映像は必見。監督は、フランスで長く脚本家のキャリアを積んだエリック・ベナール。今作が長編第7作、初の時代劇となる。主人公のマンスロンに『グッバイ・ゴダール!』(17)や『オフィサー・アンド・スパイ』(19)のグレゴリー・ガドゥボワ、『記憶の森』(01)でセザール賞主演女優を受賞したイザベル・カレがマンスロンと共に料理で公爵と対決する謎の女性ルイーズを演じる。先が見えない2022年秋、美味しくて華やかな映画が誕生した。

Story

1789年、革命直前のフランス。誇り高い宮廷料理人のマンスロンは、自慢の創作料理「デリシュ」にジャガイモを使ったことが貴族たちの反感を買い、主人である傲慢な公爵に解任され、息子と共に実家に戻ることに。もう料理はしないと決めたが、ある日彼の側で料理を学びたいという女性ルイーズが訪ねてくる。はじめは不審がっていたマンスロンだったが、彼女の真っ直ぐな想いに触れるうちに料理への情熱を取り戻し、ついにふたりは世界で初めて一般人のために開かれたレストランを営むことになる。店はたちまち評判となり、公爵にその存在を知られてしまう…。 

Director's Interview

エリック・ベナール監督インタビュー
Q.この映画のアイデアはどこから来たのですか?
ジャンル映画を3作品、その他に自分の身内にオマージュを捧げた3作品を撮った後、私はフランスのアイデンティティを形作るものに焦点を当てたいと思いました。自分たちの国の神話とアイデンティティに絶えず取り組んでいるアメリカ人は、この分野のチャンピオンです。彼らは星条旗、開拓者精神、そして自立した男の神話を持っています。イギリスには孤高性と王族があります。フランス人のDNAに関するプロジェクトを構築する可能性について考えたかったのです。18世紀について読んでいるとレストランのコンセプトの発明に出くわしました。私はこの歴史的遺産の起源について疑問に思ったことはありませんでしたので、いくつかの調査をしましたが、すぐに手ごたえを感じました。美食という、座って食事をし、陽気な瞬間を共有すると同時に、啓蒙の時代と革命の要素を全て備えているものがそこにありました。
Q.皆はマンスロンが饗宴に加えたジャガイモとトリュフの重ね包み焼きである「デリシュ」を公然と嘲笑します。
18世紀において、料理人はひたすら料理を複製することが求められ、何も発明することができず、イニシアチブもありません。したがって、マンスロンが彼の創造物を提供したことは不服従の罪に当たりますが、彼はより深刻な犯罪、すなわち食用でないだけでなくハンセン病などの病気をもたらすと教会によって断定されていた地中からの作物を使用したという罪を犯したのです。ジャガイモやトリュフは悪魔の産物と考えられていました。当時貴族と聖職者は同様に天国の食べ物ということを未だに信じていました。空中にいるという要素が多ければ多いほど、神聖な存在になるのです。鳩なんかは完璧で、地面に近い牛はちょっと劣る…という具合に。ジャガイモは非常に栄養価が高いですが、フランスで認められるまではもう100年かかります。そして、農民にその価値を理解させるために畑に兵士を配備して守るよう王を説得したという農学者パルマンティエの尽力によって、ジャガイモはフランス人の習慣に定着したのです。

Recipe

デリシュの作り方
材料(20個分)
■生地
・小麦粉 300g
・ジャガイモのでんぷん粉 35g
・バター 250g
・塩 5g
・砂糖 15g
・全乳 7cl(70ml)
・卵黄 2個

■フィリング
・大きめのジャガイモ 600g
・生のトリュフ 50g
・カモの脂 120g
・すりおろしたカンタルチーズ 90g
・塩、コショウ 少々
つくり方
■生地の準備
小麦粉にでんぷん粉、塩、砂糖を加えて混ぜる。
あらかじめ柔らかくしておいたバターを指の先で混ぜ合わせる。最後に全乳と卵黄を加え、なめらかになるまで混ぜ合わせ、生地をまとめる。生地は涼しい場所に置いておく。
■フィリング
ジャガイモは皮をむき、厚さ0.5㎝幅に薄切りする。大きめのフライパンにカモの脂を熱し、薄切りしたジャガイモを黄金色になるまで焼き、塩コショウで味を調える。火からおろしキッチンペーパーで水分を取り除き、保温する。
同時に、トリュフをスライスする。
打ち粉を振った作業台であらかじめ伸ばしておいた生地を、小さめの型に敷き詰める。薄切りしたジャガイモ、すりおろしチーズ、スライスしたトリュフを交互に重ねていく。
表面を生地でふたをするように覆い、余った生地でつくった三日月型を飾る。
180℃に予熱したオーブンで30分焼く。
オーブンから取り出し、温かいうちに召し上がれ。  
ティエリー・シャリエ氏とジャン=シャルル・カルマン氏によって考案されたレシピ
マンスロンとルイーズからのアドバイス
トリュフをデュクセル(みじん切りにしたマッシュルーム、エシャロット、タマネギなどを炒めたもの)で代用することもできます。
大量に作りたい方は、一度に複数焼ける型を使えばたくさん作ることができます。
このレシピは、オードブル、前菜、メインの肉料理の付け合わせとしてお出しすることもできます。

Cast

Manceron:Grégory GADEBOIS
マンスロン:グレゴリー・ガドゥボワ
1976年7月24日、フランス・ノルマンディー地域圏生まれ。演劇学校を経てコメディアンとして活動を始める。その後俳優としても活躍しはじめ、『Angèle et Tony』(10)でセザール賞の有望若手男優賞を受賞。TVシリーズ「アルジャーノンに花束を」(14)では主演を務め、演技派俳優として一躍その名を知られるようになる。その他の出演作は、『マリー・アントワネットに別れをつげて』(12)、『グッバイ・ゴダール!』(17)、『オフィサー・アンド・スパイ』(19)など。
Louise:Isabelle CARRE
ルイーズ:イザベル・カレ
1971年5月28日、フランス・パリ生まれ。10代のころから役者として活躍。初期作品はカトリーヌ・ドヌーヴ主演の『恋路』(91)、ジュリエット・ビノシュ主演『プロヴァンスの恋』(95)など話題作に出演。『記憶の森』(01)ではセザール賞主演女優賞を受賞。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『視線のエロス』(97)では大胆な演技を披露し話題になる。國村隼と共演したベルギー・フランス・カナダ合作映画『KOKORO』(16)で主演を務めた。その他の作品は、フランソワ・オゾン監督の『ムースの隠遁』(09)、『奇跡のひと マリーとマルグリット』(14)など。
Duc de Chamfort:Benjamin LAVERNHE
シャンフォール公爵:バンジャマン・ラベルネ
1984年8月14日、フランス生まれ。2009年から俳優として活動を始め、主にテレビシリーズで活躍。『セラヴィ!』(17)ではセザール賞有望若手男優賞、『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(18)では助演男優賞にノミネートされた。その他の出演作は、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)など。

Staff

Director:Eric BESNARD
監督:エリック・ベナール
1964年3月15日生まれ。父は映画監督・俳優のジャック・ベナール。1999年に「Le sourire du clown」で長編映画監督デビュー。主にアクション、サスペンス、スリラー映画の脚本家としてキャリアを積み、代表作にヴィン・ディーゼル主演『バビロンA.D.』(08)、リュック・ベッソンと共同脚本の『ブラインドマン その調律は暗殺の調べ』(12)がある。映画監督としても、ジャン・レノとジャン・デュジャルダン共演の『ライヤーゲーム』(08/未)以来コンスタントに作品を重ね、今作が長編第7作、初の時代劇となる。